vol.13

木の学校づくりネットワーク 第13号(平成20年10月1日)の概要

  • 巻頭コラム:「日本人の木造建築に対する愛着と憧れ」藤井弘義(理工学部建築学科講師、建築環境工学(音環境)):
    木から作られる物には、建物・家具・寄木細工・ワイン・ウィスキーの樽など広く様々に使われており、生活に密着している酒・味噌・醤油も杉板張りのような麹室で良い商品が出来上がっていくのである。その代表的な木造建物でよく表現される言葉の中に、木の香・木目・木振り・木の温もりなどがある。この表現言葉で質の良い木に囲まれていた古代の日本人が木材に対する愛着と憧れをもっているのも少しも不思議ではない。
    今日でも多くの日本人に、この木の家屋に対する愛着と憧れが継承されてきたことを反映している。             日本従来の木造建築の屋内には木が多量に用いられ,ペンキで塗られることは無かったし、柱や扉,家具などには,天然の木目と色を鑑賞できるような仕上げが施され,縁側の板には何の仕上げも施されていなかった。仕上げの施されていない木を使うことにより,庭の樹木との自然な結びつきと「わびさび」に結び付かせることもでき結果として生じるのは,刺激よりも調和と静寂といった効果である。多くの日本人は,いつの日かそんな家を持つのが「夢だ」と思っている。
    しかし,そのような家屋を建てるための良質の材木は,今ではとても高すぎて手が出ない場合が多くなったが、それでも日本人はできだけ木を使うことにこだわる。木は見映えがするだけでなく,自然の力がありしばしば襲う地震や台風,蒸し暑い夏や寒い冬など,日本を取り巻く環境に合っていることを知っているからである。今は、化学的な製品による多くの恩恵を受けているが石などの材質だと割れてしまう場合でも,木材だと,力が掛かっても,しなやかに曲がったりねじれたりするので,木材は地震国には大変な恩恵をもたらしてきたのである。木にはまた,手入れにより保湿と断熱というすばらしい特性もあり6月から8月にかけての日本の雨や湿気にもかかわらず,家屋が朽ちてしまうことはない。この時期に,木は状況に応じて変化し,ある程度の快適な暮らしをさせてくれる。木には空気中から湿気を吸収し,後から湿気を放出する能力があるからである。とはいえ,普通の人にとって,木の魅力は全く別のところにあるようだ。
    人々が木を選ぶ理由は,ほとんどの場合その外見で木の美しさにある。「木は自然の産物なので一片一片他とは異なっている。一本の木から採られた木材の各部分,あるいは同じ木の板の各部分でさえも他とは異なる。強度や色は同じかもしれないが,木目は同じではない。木を大変魅力的にしているのは,特徴,強度,色合い,扱いやすさ,さらには香りにまで見られるこの多様性なのである。*1
    木は,安物の,質の悪い建材などではない。それどころか木材を正しく選び,正しく扱えば,幾百年もの使用に耐える断熱効果の高い建物を造ることができる。ある権威者の主張するところによると,きちんと手入れさえすれば,木は決して朽ちることがありませんと述べている。その真偽はともかくとしても,木は創造者がわたしたちに与えてくれた最良の建材の一つであることに間違いないのである。このように木は、自然の産物なので手入れや扱い方により、木の美しさ・木の温もり・保温や断熱など木の魅力を存分に味わうことが出来るのである。
    そのような木造建築に対して、日本人は愛着と憧れをもっているのである。
    *1:アルバート・ジャクソンとデービッド・デイは,共著の「コリンズ 良い木のハンドブック」
  • 最近のトピックス:第14回 木の学校づくり研究会報告:
    2009年9月12日に行われた木の学校づくり研究会では、福島県で学校建築の設計を手がけている清水公夫氏より、「木の学校づくりについて~地域産材を活用した学校~」というテーマでお話いただきました。その中で、宮川小学校の事例について紹介いたします。
    ■宮川小学校の概要
    ・所在地は福島県会津美里町、2007年竣工。
    ・構造は鉄筋コンクリート造だが、低学年棟・多目的ホールは一部木造。その他、外装・内装に地元産の杉材を利用。
    ■計画段階から施工まで
    まず、地元産材活用ということを教育委員会が決定し、その方針の下で設計者が選ばれました。その後、地元産材供給連絡協議会が設立され、その中には山林所有者・林業業者・製材業者が含まれており、木材供給のための体制が作られていきました。そして、1年間かけて伐採時期、使用箇所や材種などについて議論を行いましたが、一番問題となったのは歩留まりでした。流通材ではないので、実際の施工段階で使用できない材が出てくる可能性があり、その分を材料単価で補正するなど様々な調整が行われました。
    また、材料施工の分離発注ではないため、設計図書の特記仕様書に「地元産材使用」の条件を明記することで一般流通材が使われないようにしました。施工会社への現場説明の段階でも「地元産材の使用」ということが説明され、地元産材である杉を使用した学校の建設が始まりました。
    ■伐採する山の確認
    施工会社か決定する前に、山林所有者達と目利きの人をつれて山に入り、建物に使用する部材を考慮しながら、歩留まりのいい木かそうでないかを判断して、伐る木を選択していきました。このようにすることで、現状では業界の中で一番割りの合わない山林所有者に少しでも還元されるようになります。
    ■設計段階と施工段階での材料単価の違い
    実際には、事前に連絡協議会で調整していた材料単価と施工会社の考える価格との間に差がありました。施工会社としては、通常の流通材が基準となりますので、その部分でギャップが生まれます。その部分の調整役は最終的に設計者がやる事になりました。
    分離発注で施工者へ材料支給ということも考えられますが、難しいところです。もし、材料が足らないときのリスクがありますし、それを回避するために設計者が設計の段階でどんなに細かく木拾いを行ってもどうしても数量が足らなります。実際の施工では大工の加工による端材が出てきて設計数量よりどうしても多くなるので、この部分を念頭においておく必要があります。よって、10~20%多めに伐採することになりますが、その負担分は材料単価に上乗せということになりました。
    ■歩留まりを上げる工夫を
    端柄材を床板に活用して、歩留まりを上げることも行われました。また、細かい角材もうまく利用していくことで、できるだけ捨てる材料を少なくしようとしました。その結果、通常4~5割となる歩留まりが、製品材として7割近くまでいったのではないでしょうか。
    一般的に製材所ではあまり考えずにやりやすい方法で製材を行っています。そうすると歩留まりが悪くなります。製材所としては足りない分は見込んでいるし、山から安く切ってくればいいという考えなのですが、もったいない。もう少し工夫をした方がいいのではないかと思います。


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