vol.8

木の学校づくりネットワーク 第8号(平成21年5月9日)の概要

  • 巻頭コラム:「透湿ルーフィングと呼吸する家への期待」土屋喬雄(工学部建築学科教授・工学博士、建築環境工学):
    京都議定書が発効し、2008年から2012年の間に、1990年レベルのCO2発生量より6% 減を達成しなければならなくなりました。そのような状況下にあるにもかかわらず、住宅や事務所ビルなどの民生用で消費されるエネルギー量が増加の一途をたどっています。より住み良い住環境を求めてきたことを思えば当然の成り行きだといえましょう。では、エネルギーの消費量を抑えつつ住み良い住環境を創り出すにはどうしたらよいのでしょうか。高断熱高気密、全館暖房、計画換気、自然エネルギー利用に答えがありそうです。建物のガードをがっちり固め、そこへ太陽、風力、地熱などの自然エネルギーを最大限利用するシステムを組み込むことです。
    ところで、平成13年7月にはいわゆる「シックハウス法」が施行され、新築住宅では揮発性有機化合物(VOC)のうちホルムアルデヒドを対象として、含有量に応じた建材の使用の制限と、機械換気の設置が義務付けられました。「シックハウス法」のおかげで、ホルムアルデヒドは改善されつつありますが、他の有機化合物による健康障害やカビの発生が急増しているとも云われており、カビによる健康障害が全世界的なテーマとなっています。カビを餌とするダニの増殖や建物を腐らせる腐朽菌も困った存在です。
    これらの健康障害をなくし、長持ちする家を作るには結露をなくすことが基本となります。結露には、普段目にする表面結露と壁の中などで発生する内部結露があります。高断熱化が進むほど表面結露はなくなり、内部結露へ移行していきます。とくに最近、屋根での腐れが問題となっています。「屋根を剥がしてみたらグチャグチャに腐っていた」とは、よく耳にする言葉です。その大きな原因の一つに防水層の存在があります。現在使用されている防水材であるアスファルトルーフィングは透湿抵抗が極めて大きく、外部への湿気の放散を妨げています。雨漏れ等により濡れると下地材はなかなか乾燥せず、腐朽につながりやすいのです。そこで登場してきたのが透湿ルーフィングです。雨水の浸入は阻止するが、湿気は自由に逃がす、壁で使用されている透湿防水シートと同じ原理の素材を屋根用に改良したものです。極めて透湿抵抗が小さいため、乾燥を促進し結果的に建物の長寿命化につながるものと期待されています。最終的には透湿性の高い野地板と屋根葺き材の組み合わせによって、屋根トータルで呼吸する透湿屋根システムを確立することが必要でしょう。
    家全体が呼吸し、自然と融合し、自然に還る循環型工法が求められています。これこそ、わが国が歩んできた家造りの基本であり、後世に伝えることが必要であると思います。
  • 木の学校づくり研究会より報告:
    4月11日に行われた第7回木の学校づくり研究会では、木材流通コンサルタントの二国純生氏を迎え、「世界の木材市場と日本の木材市場」というテーマで、グローバル化した世界の中で日本の木材関連市場の現状と未来についてお話をしていただきました。今回は講演の概要をご紹介いたします。
    ■世界の木材市場の状況から
    世界の森林面積は39haと陸地の3割に過ぎない。その内訳は南米23% ロシア22% アフリカ17% アジア14% 北・中米14%となっており、早成樹のポプラなどの植林を進めている中国や、欧州では拡大する傾向が見える。しかし世界の森林面積は毎年、およそ日本の国土の1/3が失われているのが現状。そのような中で、森林は持続可能な資源として注目され、近年、立ち木から流通、加工まで適正に管理された森林に対して、世界共通の基準として森林認証(FSC:1億ha以上PEFC 現在2億ha以上)が用いられるようになってきた。
    大規模で持続可能な人工林は投資の対象とされ、REIT(Real Estate Investment Trust)「不動産投資信託」TIMO(Timber Investment Management Organizaition)「森林投資管理組織」といったファンドによる所有が広まり、森林が投資マネーの対象となっていることが、森林認証普及の背景となっている。既に米国や南半球では、大面積の私有林の主要な所有者はファンドとなり、欧州でも拡大中だ。
    また先進国の森林では大規模経営により、紙パルプ・木材・木質建材から、バイオマス燃料までを含めた総合森林林産物業としての運営が主体で、1社で日本の私有林面積に匹敵する規模の管理林を所有して、経営安定のため、複数の大陸間にまたがる管理林を所有する場合もある。フィンランドのように1つの森林組合が国全体の森林を管理する場合もあり、今後、日本の森林業が生き残る上では、規模の見直しが必要となるだろう。
    ■日本の木材市場の状況から
    日本は国土の66%が森林に覆われた森林大国で、住宅は木造主体でありながら、木材供給の3/4を輸入に頼っているのが現状。先進国では中古住宅流通が7割以上であるのに対し、日本では一割強と建て替えが中心となっている。にもかかわらず、短期・中長期に見ても日本の木材需要は減少する。現在は年間80万戸であるが、人口の減少にともない2015年には30万~50万戸と1960年代の水準に戻る見込みだ。200年後には現在の人口の4割程度となることを考慮すれば、「200年住宅」を提唱する前に、中古戸建住宅の評価基準の整備の方が重要で、場当たり的ではない、実質にもとづいた方針を考えていく必要がある。
    カナダは国、州が支援して新たな地域に市場開拓(中国・四川省)して木材を売り込んでいるし、欧州では新たな市場として木造の大規模な構造体の開発が行われている。北米・欧州では世界的な視点を持った上で具体的な方針を打ち出している。日本の戦略は未だ明確ではないが、WASSが教育の場として学校に焦点を絞っている点は興味深い。

    二国氏の話は金融不況が長期化するなか、日本の林業は国際的競争力も、内需も期待できない危機的状況にあるとことを改めて指摘する内容でした。これに対し、研究会の参加者からは地域環境の保全の必要性から行政による保護、地域に密着した日本独自の小規模林業の可能性についての意見が寄せられました。


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