vol.17

木の学校づくりネットワーク 第17号(平成22年4月10日)の概要

  • 巻頭コラム:浅田茂裕(埼玉大学教育学部教授・博士(農学)、木材工学(学校の快適性、木材と教育)):
    ご存知のように,木材の快適性研究は,木材中の化学成分の効能,木質環境における木視率,温湿度変化の抑制効果など,建築物における木材利用の有効性を示すさまざまな論拠を提供してきました。私自身は,まだまだこの分野では新参者で,埼玉県,長野県,ときがわ町が共同で実施した木質化校舎の効果検証のプロジェクトが最初ですから,ほんの6,7年前からの駆け出しということになります。
    さて4年程前になるでしょうか,埼玉県での調査結果を日本木材学会で発表した時のことです。同じ分野の大先輩から次のような言葉を投げかけられました。
    「木材とコンクリート,どちらを学校に使えば子どもによいかなど調べなくとも明白である。快適性の研究者はいつになったら最適な学校環境の設計図を示すつもりなのか。もし化学成分が子どもの行動に大きく影響しているというなら,教室の後ろに丸太をおくだけでよいではないか。」
    これは悔しくもありましたが大きなショックでした。なるほど,私の研究結果からは最適な教室ということがまるでわからなかったのです。
    国産材の利用を推進し,日本の森林を再生しなければならない現状にあって,これからの研究には,木材利用と建築設計との関連を検討することが必要と考えられます。単に木材を使うということだけでなく,大量の木材を炭素ストックとして公共建築物に使用するため,そして最適な場所に木材を使うための根拠が必要なのです。「丸太を置けばいい」に対する答えを示すということです。
    現在私は,フィールドワークを中心とした質的研究法でこの課題に取り組んでいます。質問紙等の結果にみられる平均値は,一人ひとりの子どもの姿を見ていません。観察をもとにした調査を進め,学校で起こっている絶対的な現象を説明しうる最も合理的で,公共性や共有性(相互主観性)を備えた妥当な解釈を探り,学校建築と木材の関わりに迫りたいと思っています。質的研究法は人間の行動や生活文化に視点をあてる社会科学的な手法で,深くご存じない方からは主観的で,科学的ではないと指摘を受けてしまうのですが,実験や環境測定,統計的なデータ(量的研究の結果)との照合によって,より充実した成果が得られると確信しています。また,最近指摘されるADHDやLDなど様々な問題を抱えた子ども一人ひとりにとって木材がどのような機能を果たしているか明らかにしていくことも時代の要請と考えています。
  • 最近のトピックス:「木のまち・木のいえ推進フォーラム発足」:
    フォーラム設立の歴史的な背景と今後の木造造建築と森林資源」の概要を紹介させていただきます。
    ■戦後の木造建築
     内田先務所建築も国産材で2階建てられる時代でした。一方世論としては関東大震災と戦時中の空襲による戦災で、戦後は木造建築が、都市を都市火災の燃料と見られるようになり、都市を火災から守ろうとする世論の盛り上がりによって、ついに1959年の建築学会の大会における「都市に於ける木造禁止」を求める動きにまでなりました。
     木造建築の建設が減少して、コンクリート造が戦後の都市復興の主要な構造となりながらも木材は枯渇してゆきました。日本のコンクリート造の普及を支えたのも木材だったのです。海外では高価な型枠工事も優秀な大工職の存在によって、日本では容易に行われ、全国的に普及したのです。
    ■木造建築の見直し
    その後1981年建築基準法が性能規定を取り入れ、限界耐力の検証を認めるようになったことで、それまであった木造独自の耐力基準が見直され、都市における木造建築建設の可能性が広げられました。近年は国内の森林資源に再生の兆しが見え、木造に関する研究分野においても、伝統的建 築の耐久性、限界耐力検証の実験が進み、防火についても、燃え代設計、木製防火戸が認可され、木造建築の建設に従事する技術者や、この分野に興味を持つ学生も年々増加しているようです。
  • WASS研究室から


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