vol.21

木の学校づくりネットワーク 第21号(平成22年8月7日)の概要

  • 「大分県中津市でシンポジウムを開催!」:今秋、大分県中津市において市との共催で木の学校づくりシンポジウムを行います。日程は9月25日(土)で、会場は中津市が地材地建を目指して建設した鶴居小学校体育館という総木造の体育館です。中津市の取り組みについては、本紙の17号、18号で紹介を行っております。プログラムや詳細な時間については追ってお知らせいたしますので、皆様のご参加をお待ちしております。
  • コラム:「木の学校についてのとらえかた」:
    WCTEについて初めて耳にしたのは2009年の5月ぐらいだったでしょうか。木と建築についての国際会議が2010年の6月にあるということでした。
    WCTEとは”World Conference on Timber Engineering” の略で、「木材工学国際会議」と訳せます。WCTE2010は第11回にあたり、1988シアトルにはじまり、1990に東京、1991 London、1996 New Orleans、その後2年ごとに開催され、2008宮崎、2010にRiva del Garda (イタリア北部) で開催されています。
    私が木の建築について深く関わったのは2009年以来です。2009年の秋から翌年春にかけて、研究センターにある木の学校を利用した人々の意見のデータをもとに分析を行い、私にとって新鮮な「木の学校」について投稿希望の梗概を提出し、招待を受け、8ページの論文にまとめ投稿しました。
    今回の論文は木の学校を実現した学校職員と児童生徒の「木の学校についてのとらえかた」についての記述を分析し、論文の題目は “Cognition on Planning Wooden School Architecture” となります。
    論文では「木材を活用した理由」、「学校施設の今日的課題への対応」などの記述を分析しました。結果として学校職員と児童生徒、そして地域の方々が木の良さを理解し、木の学校を実現していることが分かりました。木の暖かさ、柔らかさについては何度も何度も記述されていました。幼稚園では木に触れることの良さ、中高ではすぐれた教育環境の実現について多く記述されていました。論文の結びとしては「もし分析で見いだされた認識が人々に広まれば、優れた木の使用は加速すると考えられる。」としましたが、都会のひとびとも貼り物でない無垢の木の良さについて認識し、木の活用が高まればよいと思っています。(宮坂)
  • 建築生産シンポジウムで研究論文発表:
    7月29、30日に開催された日本建築学会の建築生産シンポジウムでWASSの研究成果の論文発表を行いました。木造建築のセッションで「木造ハイブリッド構造を適用した学校建築の構造形式に関する調査研究」、「木材を利用した学校建築の生産プロセスにおける仕様書の役割」、「秋田県能代市における木造学校建設事例の検証」の3つの論文です。
    1、2番目の論文の内容の一部は本紙の19号、20号に掲載してありますのでご覧下さい。3番目の内容は、木造学校の建設が集中的に行われている秋田県能代市の8校7棟の事例について、その概要、事業スケジュールや工期、木材業者団体の役割などの分析を行ったものです。
    それぞれの論文の詳細については、「第26回建築生産シンポジウム論文集(2010)」(日本建築学会)をご参照されるか、WASS事務局までご連絡下さい。
  • WASS設計手法研究部会の研究報告:
    ■設計者の役割と木の使い方
    一般的に学校に木を使うことには、学校の規模や教育としての場、地域の中核としての性質から、発注者より以下のような意義が求められる。(「こうやって作る木の学校」本通信.19号参照)
    ① 教育的効果
    心理・情緒・健康面・熱環境への効果
    木の空間を生かす環境問題や地域学習の場
    ② 地球環境への配慮
    持続可能な木材利用による森林整備へ貢献。
    その結果としての地球温暖化抑止へ貢献、
    ③ 地域の風土、文化への調和
    大工技術者の育成、地域の林産業の活性化
    一方で、木の学校の設計には、通常の学校や木造の住宅とは異なる課題点が多く、設計者は、木材の供給源となる山林と学校の現場の双方の事情を把握しつつ、木の使い方についてプロジェクト全体見通して調整していく役目を負う。
    本研究グループは木の学校の設計における課題点を整理する試みとして、各学校における木の使い方に着目し、「どのような木を(樹種)」「どこから集め(産地)」「どのように(加工方法)」「どこに(部位)」使っているかという点に留意しつつ、特徴的な木の使い方をしている事例を収集し、設計者にアンケートとヒアリングを行い、木の使い方の判断要因と設計上の課題点を調査している。これまでに対象とした校舎の事例は、木造校舎(一部RC造)2校、混構造4校、内装木質化2校で、今後より多くの学校を対象として調査を継続する予定である。
    ■各部位と木使いの特徴(表1参照)
    8つの学校を延床面積の順に並べ、木の使い方について主要な部位、材種と木材加工、木材調達の範囲を地域材(県産材含む)、県外の国産材、外材に区分して示した(表1)。大断面を要する構造材には国産針葉樹の他、外材のベイマツも用いられており、カラマツとベイマツは集成材として用いられる傾向がみられた。一方、意匠性が求められる場合もある仕上げ材には無垢材が用いられる傾向があり、特に日常的に摩耗する床材には広葉樹もみられる。天井材にはスギ材の他、ボード材が用いられる傾向がみられた。また加工の精度が求められる、建具と窓枠には国産集成材の他にスプルス、パイン材等の外材が用いられる傾向がみられた。
    木材の調達範囲にみられる傾向を大別すると、発注者となる市町村やその周辺の山地から集材を行う地域材を重視する場合と、木材の調達範囲を限定せず複数の地域から木材の調達を行う場合に分けられる。基本的に川上にあたる林産地では前者の傾向が強く、川下である都市部では後者になりやすいと考えられる。しかし林産地であっても、発注者が材料を支給する方法(分離発注)をとらず、建設業者に委託する場合(一括発注)、地域材の使用を基調としつつも、性能を確保しコストを抑えるため、または施工スケジュールを考慮して、部分的に他の地域の国産材や外材を利用する場合がある。また私設の学校や、県が運営する学校である場合など特定の林産地を背後に背負っていない場合でも、地域産材が優先して用いられる場合もある。木材の調達範囲は発注者や設計者が木を使うことに見出す意義に応じて異なってくる。
    ■木の使い方に見られる木の学校づくりの課題
    <川上の学校>
    木の学校づくりに取り組み易いのは、設置の意義として前項③を強く意識する川上である。熊本県のS小学校(表1.①)は町土の8割が人工林に覆われたスギ・ヒノキの供給地に立地しており、山林が伐採期を迎えるなか、町内の公共施設では木材利用が促進されてきた。無垢材による木造2階建校舎の設計案はコンペで提案されたものであるが、建設に必要だった構造材は地元森林組合や地元製材業者の会、林業研究グループによって調達され、パイロット材の管理には熊本県林業研究指導所が指導にあたった。このように行政が積極的に木材調達に関与する場合は、木材の性能にばらつきに配慮した、余裕のある歩留りを設定することが可能となり、各部位の仕様に合わせ地域材を用いやすくなる。
    しかし地域材を用いる意思が明確な林産地であっても、地域材が構造材として用いるのに必要な規定の性能や数量に達しない場合もある。スギの良材の産地として知られ、平成6年以降市立の小中学校を木造化する取り組みを続けてきた秋田県能代市のS中学校(表1.④)では、地域産のスギの無垢材により計画されていた柱・梁材に、予定された性能を満たせない部分が生じ、外材のベイマツ集成材で補い必要な性能を確保している。
    地域材の樹木の性質や供給量によっても、用いる個所や加工方法を工夫する必要が生じる。戦後ブナ林業が盛んだった時代を経て、現在は針葉樹・広葉樹を扱う比較的小規模の製材業が営まれている福島県南会津町のT小学校(表1.⑧)の場合は、町内で賄える木材供給量を考慮した結果、使用部位は限定され、堅牢で耐久性が求められる床に広葉樹のコナラを使用し、スギ材は取り換えのきく外装材に、捩れやすいカラマツを間仕切り壁として水平方向に連結して用いるなど、樹種の性質に合わせ多様な地域産材の使い方が工夫されている。
    アンケートでは流通材で対応できる構法を初期から考えることも必要という設計者の意見もあった。地域材と流通材との使い分け、集成材と無垢材の使い分けの判断も設計者に委ねられた地域材を活用する工夫の一つである。
    <川中、川下の学校>
    林産地ではない都市部の学校でも前項①や②にあたる意識の高まりから木が使われている。福岡市の私立S幼稚園(表1.②)では樹状型の柱とフラットな格子状の梁による開放的な空間を意図した木造園舎が計画され、それに要する性能を満たす柱と梁には信州カラマツの集成材と宮崎産スギ材の集成材が用いられ、近隣及び遠隔地より木材が調達された。同じく私立の神奈川県厚木市のN初等学校(表1.⑥)では、環境に配慮する理念から、丘状の敷地と一体化した木架構の校舎が計画され、木材も地域循環を意識して県から補助金を得られる県産スギ材が使用された。私設の学校では発注者から木材の供給を受けることはないが、設計者が明確な志向を発注者に示し、補助制度を活用するなど、早期に準備を進めることで木材の調達範囲を選択することもできる。
    調査事例中、木材の調達先が最も広範囲に渡っていたのが、大手組織事務所が設計した東京都港区K小学校(表1.⑦)であった。K小学校ではサッシ周りの外材の他に、区が都内に所有する区有林のスギ材、北海道のカバ材、静岡、千葉のスギ材等が仕上げ材として用いられた。設計者ができるだけ木を使ってほしいという区の意向をふまえつつ、工期を重視して、多肢にわたる施工業者に樹種、性能以上に木材供給先を指定することで負担がかからぬよう配慮した結果である。
    川上と川下の交流はまだ始まって間もないが、アンケートでは、川下の事例では各地の樹種の性能やメンテナンスを含めた使い方の指標となる情報を求める声が目立った。
  • 第19回木の学校づくり研究会より「都市の木造化について」講師:腰原幹雄氏(東京大学生産技術研究所准教授):
    ■普通の建築材料としての木材
    木材というとばらつきや欠点があるために構造解析をしにくい材料である、鉄筋コンクリートや鉄骨のような工業材料ではないために木造建築は工学の外にいる、などと言われてきた。しかし、最近はエンジニアードウッドなどのばらつきや欠点をなくす方法、またばらつきをコントロールしてその中で設計を行うということが可能となってきている。重要なのは、ばらつきなどの要素や強い・弱いではなく、それぞれの性能をしっかりと把握することである。
    そういった状況の中で現在、森林資源の整備・有効活用や炭素固定能力など、木材の利用について追い風になっており、このチャンスに多くの木造建築を造る、木造の技術を進展させるということを進めていかなければならない。そして、適材適所という考え方の中で、鉄筋コンクリートや鉄骨と同じように木材が普通の建築材料、構造材料として受け入れられるような仕組みが必要となってくる。
    ■都市の中の木造建築
    2000年の建築基準法改正による性能規定化によって高さ制限や階数制限がなくなり、これまでの平屋の大規模木造だけではなく、都市の中の木造建築として多数階の中層木造・高層木造という建物が建てられるようになった。金沢のMビルなど実際に建てられた多層木造建築もあり、その他にも色々な計画が進められている。
    こうした新しい木造建築が技術的にも可能となったことは木造関係者の中では広まっているが、一般的な建物としていくためには鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの他分野、地方公共団体など施主となる人達にもしっかりと伝えることが重要である。
    また、大空間が必要な建物や避難施設としての建物ということを考えるとすべて木造にすることはハードルが高いので、公共建築などの中に1層でも2層でも木造にしていくことで設計者や施工者の木造への認識も出てくる。そして、そのためには保育施設や診療所、会議室のような市民が集まる場所など木造が喜ばれる用途についても考えていかなければならない。
    ■建物のモジュール設定と材料規格の重要性
    こうした木造建築を建てていくためには、そのスパンを一体どのようにするのが良いかを考えていかなければならない。今までの木造のモジュールは基本的に戸建住宅のためのモジュールなので、オフィスなどこれまでと異なる用途の木造建築にあわせた適切なモジュール新たにを作っていく必要がある。
    また、それとともに中高層木造用の材料の規格を新たに作るということが重要となる。例えば、戸建住宅は非常に高度なオープンシステムであり、製材屋は105mmや120mmという幅の製材を作っておけば流通に乗せられ、安く作ることができる。設計側もそういった材料が氾濫していることが分かっているので規格材を利用し、木造住宅を安く作ることができる。一方で、木造の耐火部材などについては各々ばらばらに開発しているからなかなか一つの建物にならない。
    現在は非常に重要な時期で将来的に失敗しないためには、関係者で協力して各部材について一通り揃えて安定供給する規格や仕組みなどのベースを作ってから、各社オリジナルの部材を作るという順序にした方が良い。また、どういうモジュールの建物を想定しているかを考えることも規格作りでは重要となる。
    このようにしてモジュール、材料の規格を作っていくことで建物としての標準形ができ、そこから建築家の知恵によって魅力ある発展形に繋がっていくことになる。今はこの標準形、ベースをしっかりと作ることが大切であり、このことにより戸建住宅のオープンシステムのようになれば、安く大規模な木造建築が可能となる。(文責:松田)


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