vol.22

木の学校づくりネットワーク 第22号(平成22年9月4日)の概要

  • 木の学校づくりシンポジウム in 中津 開催!
  • コラム:使い続けられる木の学校 その1:
    長澤センター長の勧めで夏休みに岡山県高梁市の吹屋小学校を訪ねた。吉備高原の山中、ベンガラを生産してきた鉱山の村に明治42(1909)年に建設された木造校舎は、現在も生徒が通う、現役最古の木の学校である。建物は二階に講堂をもった本館と平屋で教室棟の東校舎、体育館として使われている西校舎で構成され、左右対称の配置となっている洋風木造校舎である。スギ材によるトラス構造が架構の特徴で、廊下部分の架構はあらわしになっていた。外壁はスギ板の下見板張り、腰板部分は縦羽目板となっていた。
    磨り減った階段の手摺や柱の傷が使い込まれた歳月を感じさせ木造校舎ならではの魅力となっていた。木造校舎の耐久性を示す貴重な例であるが、現代の木の学校づくりの参考として維持管理の取り組みが気になった。これまでに行われた主な改修工事は、昭和初期の本館の玄関ポーチの改造と廊下兼屋内運動場だった土間に床を設ける工事で、その後地盤沈下に応じた補強のため方杖を設置した他は、雨漏りの補修や穴が開いた床の張り足し、建具・サッシの入れ替えを行った程度で、日常的な掃除以外のメンテナンスを行うことはないという。しかし建物利用者による日常的な整備こそ、維持管理の基本ではないだろうか。現在は7人の生徒で掃除をしていると聞いたが、よく磨かれ黒光りした床が印象に残った。(樋口)
  • 環境研究グループからの研究報告:
    近年、環境問題が大きく取り上げられ、地球規模から身近な住環境まで対象として考えられるようになっている。学校建築においては、戦後建てられたRC造の校舎の老朽化に伴い、耐震補強工事がおこなわれる中、内装木質化による教室の室内環境改善のため改修工事が進められている。温度・湿度の安定化や衝撃緩和、精神的安定が期待できる点に、注目され始めている。また、全国各地において林業の衰退が報告されていて、その改善のため、埼玉県においては「彩の国木づかい促進事業」といった県産材を公共施設等に活用することを通じて広く県民に県産材の良さを普及啓発することにより地域林業の活性化を図ることを趣旨とした政策が実施されている。
    教室の熱環境調査例については梅干野や吉野らが発表しているが、教室の内装木質化に関する温熱調査は、ほとんど研究はされていないのが現状である。今回、環境研究グループは、内装木質化での都幾川中学校の室内環境の実測を行い、内装木質化前後で室内の温熱環境と温冷感について調査した。又、暖房機の使用によって低下しがちな空気環境の改善の効果についても調べた。
    学校建築に木を取り入れる主な理由としては
    ●木の持つ材質により室内環境の向上が期待される
    ●衰退する林業の活性化と伝統技術の継承につながる
    ●短い工期で実現できる
    というメリットを伴い、学習環境の向上を図ることができる。
    埼玉県ときがわ町では、面積の 7 割が森林という町の特性を生かし、小中学校の改修工事では、内装に地元の産材を使用した「室内空間の内装木質化」に積極的に取り組んでいる。都幾川中学校でも、平成 21 年の夏期休暇期間を利用して内装の木質化改修工事を行った。
    文部科学省が提唱する学校環境衛生の基準は「学校保健法(昭和 33 年法律第 56 号)に基づく環境衛生検査、事後措置及び日常における環境衛生管理等を適切に行い、学校環境衛生の維持・改善を図ること」を目的としている。
    この基準の中の「教室等の空気」の項目では、温熱及び空気清浄度についての判定基準は表-1に示す通りである。
    ■1年半の長期にわたる長期実測結果
    都幾川中学校の熱・空気環境年間グラフを図-1に示す。これは、6時間平均での変動グラフである。図-1から、内装木質化による熱・空気環境への効果は少ない。ただし、室内温度環境は、冬期では
    10℃以上、夏期では30℃以下という学校環境衛生基準内に収まっている。
    図-2は教室の内装木質化の詳細図であり、写真-4からは、夏型結露対策として、床の木質化は極めて有効な結露防止になっていることが分かる。
    温度環境に関しては、内装木質化による効果は少ないが、室温の立ち上がりをはやくすることや木床の重ね張りは足元の寒さをとるのに有効であることが明らかになっている。又、最上階は外気の影響を最も受けやすいので、最上階の断熱性能の向上が、夏季の防暑対策となる。
    改修後の都幾川中学校では相対湿度の値が学校環境衛生の基準で望ましいとされている 30~80%を満たしており内装木質化すると相対湿度が安定する。これは木材の持つ含水性による調湿効果の影響と思われる。
    空気環境(CO2)については、冬期1500ppm以内の基準に関し、開放型燃焼器具を採用していたため、1500ppmを超える時間帯が長かったものと考えられる。密閉型燃焼器具への転換が必要である。
    以上のことから今後は内装の木質化と合せて、適切な断熱計画による断熱化を図ることが理想的である。
  • 「第20回木の学校づくり研究会」より「木造建築における防火技術及び法規の現状と課題」講師:安井昇氏(桜設計集団一級建築士事務所):
    ■木の素敵な燃えかた
    火災とは、可燃物と酸素、着火源(熱エネルギー)の3つがそろって初めて起こる。またどれかを退ければ消火できる。一般的に木材は火に弱いと思われているが、木材は加熱を受けると表面に沢山の小さな空洞の層をつくり、それが断熱材の役割を果たし、内部に熱を入れないようになる。水分が全て蒸発してしまわないと表面は燃えてこず、また表面は燃えていても裏面は熱くならない素敵な燃え方をする。ただし燃え進みにくいが、燃え止まりにくい。1分間に0.3~1mm程度燃えすすみ、放っておくと全部燃えてしまう。この燃えかたをきちんとコントロールして、人が逃げるために何が危険か考え、煙に巻かれず、輻射熱で逃げられないことがなく、消防隊が火を消しやすく、隣の建物に火を移さないように配慮すれば、安全な木造建築を計画できる。
    ■防火構造の考え方
    木造が火に弱いと思われてしまうのは、構造体部分の可燃物の量の多さによる。裸木造の方は短時間で躯体に火が回り、収納可燃物と構造体がほぼ同時に火が回る、準耐火建築物の場合はまず収納可燃物が燃え、次に躯体に火がまわる。火の回りが早くては人が助けられず、消火活動の妨げになる。そこで木造の準耐火建築物は構造体がゆっくり燃えるようにデザインされた。同じ可燃物量でもゆっくり燃えると周辺への影響は小さく、消火しやすい。また郊外と密集地では防火のあり方も変わってくる。密集地では隣の裸木造も燃えてしまう可能性がある。隣の家が燃えている場合に、外壁と軒裏だけでも燃えないようにモルタルやサイディングで被覆するのが防火構造の考え方。裸木造が燃え尽きるのにかかる30分間、燃え抜けないことが防火構造の条件となる。火災外力を与えるものが30分で燃え尽きると仮定して2階建程度の建築物であれば外壁で延焼防止が可能という考え方である。
    ■燃えかたをデザインする
    燃やさない部分、燃え抜けない部分をどう設定するのかが準耐火建築物の課題である。例えば木造建築にとって構造上重要な小屋裏を守り、同時に意匠上重要な軒先を被覆せず防火性能を持たせるために垂木の間隔や垂木の断面寸法は変えずに、面戸板と野地板の厚みを上げて防火性能を高める方法がある。平成12年の準耐火建築物の野地裏に関する規定の根拠となった実験では垂木40mm角、面戸板と野地板がそれぞれ60mmと30mmであれば50分間燃え抜けないことがわかった。50分間燃え抜けなければ隣の家の火事は鎮火しているという考え方だ。また京都の町屋は火事があるけど、なかなか死なないと言われているように、敢えて白い煙を出し、火災の早期発見を促す避難を意識した燃やし方も考えられる。燃えてはいけないところはどこなのか、どんな燃やし方をしたらよいのか考えながら技術開発する余地はまだまだ残されている。
    ■木造耐火構造の可能性
     2000年に法律改正があって、木造の耐火建築物も建てられるようになった。現在は4階建ての木造建築が建てられるようになっている。その手法としては①最初から燃えないように木材を被覆する方法、②火が燃え進んでいくと、木裏に入れた鉄に熱エネルギーが吸熱されて火が消える仕組みを木材に組み入れる方法、③一定の時間は燃え進み、その後木材自身が燃え止まる部分を、薬剤を注入して形成する手法などがある。さらに建物の部材の防火性能を高めるのではなく④木材を、燃えないところに遠く離すという方法も体育館やドーム型建築にみられる。現在は①が比較的多く実現されているが、費用がかかる②や④は少なく接合部の防火ラインが実証されていない③はまだ開発中である。しかしこれらの今後木造らしい木造建築を建てるための技術として期待される状況である。
    (文責:樋口)


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