vol.29

木の学校づくりネットワーク 第29号(平成23年5月14日)の概要

      

  • 『日本林業はよみがえる』読書会開催:4月16日、森の贈り物研究会事務所において、昨年6月に発足した菅内閣の内閣官房国家戦略室内閣審議官として、第18回木の学校づくり研究会において「日本林業の実態と国家戦略」と題してご講演いただいた梶山恵司氏を囲み、著書『日本林業はよみがえる』の読書会が開催された。
  • 調査研究報告:「地域材を活用した学校づくりの課題~木質建材調達はニッチな業者から~」二国純生氏(有)二国事務所 代表取締役)
  • 第26回木の学校づくり研究会より「木造建築物の耐久性と維持保全」講師:中島正夫氏(関東学院大学工学部教授):
    中島先生は、これまで木造建築の維持保全をテーマに、公共施設の維持管理体制や手法の調査に取り組まれてきた。今回は1980年代以降に建てられるようになった国内の大規模木造建築や日本よりも構造用集成材の歴史が古いアメリカの事例調査の結果をふまえ、課題点をお話しいただいた。
    ■木造建築物の維持保全
    一般的に木材は経年劣化しやすい材料としてとらえられているが、木材といえどもある環境が維持されれば、劣化もある一定のレベルで推移していく。しかし木造建築物の仕上げ部分の劣化に応じて構造物としての性能も下がるため、ある時点で点検補修をして性能回復を計り、それを一生のうち何度か行って、あるところで一定レベル以上の性能低下に達した時点で、大規模な修繕をして、当初の性能まで回復させる必要がある。この維持保全は大きく分けると事後保全と、予防保全に分かれ、事後保全は何か起こってから対処すること指し、予防保全は予防を行うことをいう。これまでの維持保全の特徴としては事後保全が中心的であったが、これからは安全性の確保やコスト削減のために情報に基づいて保守・補修をしていくことが、必要となる。 維持保全のあり方は、材料構法の保守方法や材料の耐用年数の情報、材料メーカーや施工者から提供されるべき施工図面に基づく定期的な点検、必要に応じた交換、補修などを行っていくことである。そして設計者には、保守監理計画をきちんと立案し、その情報を所有者・管理者に提供することが求められる。
    ■維持保全の実態
    大規模木造建築が年間数棟建てられるようになった1990年代前半に、全国の学校施設を中心に文化、スポーツ施設の所有者に行ったアンケート調査では、施設の管理運営を委託しているところは、全体の2割に満たず、維持保全のための図書を備えているところはさらに少なく、半数以上の施設から維持保全をしていないという回答があった。現状は変わってきているかもしれないが、20年前の維持保全に対する意識cは低いといわざるを得ない状況であった。また不具合の内訳としては、雨漏り、建具のゆがみや反り、開閉不良、柱の割れや床鳴り、腐朽や蟻害などがあげられた。一方2000年代行われた築30年以上経つ集成材を用いた施設を対象とした調査からでは、腐朽や蟻害などの生物劣化に加え集成材自体のはく離や割れがみられた。
    ■耐久性の評価
    1930年代より集成材の利用がみられるアメリカの事例調査で、築74年経過しているカゼイン接着剤を用いた教会を確認した。この教会では構造材として用いられたパイン材の集成材は、はく離量が少なく、特別な修繕を経験することがないまま、健全な耐久性を保っていた。一般的には耐久性が劣るといわれるカゼイン接着剤も屋内使用して乾燥状態におかれていると長持ちをすることがわかった。一方で日本の場合は、温暖湿潤で台風などの気象状況により風雨による劣化や生物劣化を起しやすい環境にあることも考慮しなければならない。
    メンテナンスインターバルをどの程度に設定し、どの部位のどんな材料を使った場合、どのくらいの年数でどのような状況になるのかといった材料の耐応年数の傾向は、使われ方や環境に応じて異なる。この点に関するデータベースが相当量蓄積されてくると、大規模木造建築でもかなりきめ細やかな維持保全ができるようになるが、現状ではまだまだそこまでデータが整理されていないのが実情である。木材利用促進法により今後、木造の公共施設がますます増えると思われるが、劣化が激しければ木造にしてよかったと思ってもらえない。メンテナンスが十分行き届く体制を整えることは、木造建築物の評価を保つためにも重要な課題である。


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