vol.36

木の学校づくりネットワーク 第36号(平成23年12月17日)の概要

  • 木の建築フォラムWASS共催シンポジウム開催:
    11月12日(土)、秋田県能代でNPO法人木の建築フォラムとの共催シンポジウム「地域の木の学校づくり」が開催されました。会場となったのは、昭和12年に建てられた、木造の旧料亭「金勇」で、冒頭あいさつに立たれた齋藤市長から木都能代といえども木を使い続けることは容易ではないと議論と提案を歓迎する言葉をいただきました。
    2部構成のシンポジウム第1部では90年代以降7棟の木の学校を立ててきた能代市を事例にWASSの浦江先生の司会で「地域ぐるみで木の学校をつくる」と題した議論がなされ、木材調達の苦労や木の学校の教育的効果が話題となりました。また秋田県立大学木材高度加工研究所の飯島先生からは、少子化の影響で折角建てても残らないと、第2部のテーマ「木の学校のサスティナビリティ」に繋がる問題が提起されました。第2部では筑波大学の安藤先生の司会で補修され使い続けられる愛媛県の日土小学校、廃校を芸術活動に拠点に活用する越後妻有地方の学校の事例が報告されました。
    全体の議論の中で木を使うことの意義が焦点となり、第1部では崇徳小学校の佐藤校長が、苦労して建てられた木の学校の良さは子供たちにきちんと伝わっていますと意見され、第2部では会津地方の木を活用して設計してきた清水氏から木を使うことの価値を高める使い方を心がけることが大切という意見が出されました。
  • WASSへの投稿文:「第4回木の学校づくりシンポジウム開催に向けて」長澤悟:
    東洋大学 木と建築で創造する共生社会研究センター(WASS)は、文部科学省のオープンリサーチセンターとして平成19年度よりスタートしました。その目的は木の建築を実現しやすい社会システムの構築であり、特に学校建築を主軸としている点に大きな特色があります。
    学校建築を切り口とすることについては、住宅と比べ1校つくるのにも使用量が多く、大型木造建築として一般流通材と異なる材径や材寸が必要とされ、また設計上も強度や含水率等の性能保証が求められることなどから、間に合わせでは対応できないことがあります。学校建築は小規模校であっても、大空間、大規模な建築です。その点で多分野にまたがって様々な課題が伴い、総合的な対応方法が求められます。木を活かした学校建築が実現できる社会の仕組みや技術が整えば、あらゆる建築を木造化する可能性につながるとさえ言えるでしょう。また、なにより学校は次代を担う子供たちの教育の場です。木材は子どもたちが育つ場をつくる上で、快適、健康、安全、学び心地のよさ等の点で優れた特質を持っています。それとともに、木の学校建築は、そこで生活し、身近に感じることを通して、伐って、植えて、育てるという山林の保全・育成の重要性について知り、活動するきっかけとなったり、地域の活性化、技術の継承、地球温暖化対策等、木を活かした建築を作ることの意義を考えたりする教材そのものとなります。
    四半世紀にわたる大型木造建築の断絶は、設置者側、設計者の双方に生物材料である木ならではの建設スケジュール、コスト、積算、設計や維持管理のノウハウ等に関する経験の蓄積、継続の機会を奪い、その結果、木の学校づくりに二の足を踏む様子がみられるのが現状であります。また、木を中心にみると木材利用に関する地域のシステムも失なわれております。川上の林業、川中の製材・乾燥等の木材加工業、そして設計・建設・教育等の川下との結びつきも失われています。現実的な課題としては、地材地建にこだわれば価格、品質、量の確保が難しくなるため、山同士の連携や一般流通材の活用が必要な場合もあります。これらをふまえ、木の学校をつくりやすくするため、また継続してつくられるようにするためには、「山」と「まち」をつなぐ現代の流通目に見合った「流域」を新たに構築する必要があります。
    早いもので、本年は5年間時限の最終年度に当たります。この間、木の建築を取り巻く社会情勢は大きく変化してきました。森林・林業再生プランがまとめられ、とりわけ平成22年10月1日には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(木促法)が施行され、国の方策として木材利用が促されるに至りました。
    学校建築について言えば、国レベルでは、文部科学省が進めてきた木の学校づくりが、林野庁と合同の調査研究につながり「こうやって作る木の学校」が公刊され、国土交通省の官庁営繕部では木促法を受けて、木造計画・設計基準がまとめられました。それぞれにさらに次の段階の検討が進められようとしています。各都道府県で林業の進展と木の建築に関する取り組みが進められ、地域ごとに個々の特色を踏まえた木の建築、木の学校づくりの多様な先進事例が実現されるようになっています。その渦中でWASSの活動も発展し、注目も受けるようになってきました。
    今回の本日のシンポジウムは第4回となります。振り返ると、WASSの活動は、木、木の建築、木の学校建築に関わる幅広い分野について、実態を知ること、特にそこで行動し、発言している人々を尋ね歩くことから始まりました。その中で、WASSの活動の中心となる人々と出会い、研究活動を組織し、テーマを発展させてきました。変化の激しい時代にあって世代を超えた仕事である林業の在り方、地域を支える小規模製材業や木材加工業の在り方、設計技術や木と付き合う文化を再生しながらの木の建築を実現するための企画、計画、設計、施工に関わる問題点、地球環境問題との関わり等、次々に大きな世界が開けてくる中、第1回のシンポジウムを活動2年目の平成20年度に開催しました。テーマは、「木の学校づくりで地域を元気に-木の建築による共生社会の創造」です。事例の紹介と、WASSの決意表明の場に多くの参加者が集まり励ましの言葉をいただく機会となりました。
    全国各地域において木に関わる様々な分野で、創意と行動力をもって活動している人々との出会い、個々の努力の様子、語られる言葉から大きな刺激を受け続けました。一方で、それぞれのフィールドでの取り組みが他とうまくつながっていないことの問題を感じてきました。それを踏まえ、研究は次の4つを柱として進めることになりました。
    (1) 木の学校づくりのための地域間、業種間ネットワークと好循環フローの構築
    (2) 地域実態に即した木の学校づくりの設計手法の構築
    (3) 構造・構法の開発、木の学校空間の環境評価、
    (4) 木の学校データベースの構築
    その途中経過の報告を含めて、21年度に第2回のシンポジウムを開催しました。テーマは、「木の学校づくりネットワークの構築-木の建築による共生社会の実現に向けて」です。少し方向性が見えてきた一方、難しさも具体的に感じ、「わけいっても わけいっても 深い山」という想いと、山の問題に踏み込みすぎると木の建築という本題に戻れないおそれを感じ、建築の問題を中心に活動を進めなければとも考えたりしていました。
    しかしながら、研究、交流を深め、木の建築づくりの意義をとらえていくと、山と結ぶところに木の建築、木の学校づくりを進める大きな意義があることには気づいていたのです。埼玉県ときがわ町や栃木県鹿沼市の地域材活用の取組、地域力を生かした秋田県能代市の「地産地消」の取組、大分県中津市の「地材地建」の活動等に触れる中で、それらをもとにして研究活動の方向性を皆さんに問うたのが、第3回のシンポジウムでした。テーマは、「木の学校づくりは志-山と町をつなぐ『地域材』の活用」です。
    「地域材」を活用する良い面と同時に「地域材」という限定が引き起こす問題点にあります。一つには、材の調達に苦労することです。一度に大量の木材を必要とするけれども、学校の仕事は山の仕事にとっては一過性です。突然の注文には応じられないのです。木には伐期と乾燥という工業製品では考えられない足かせがあります。この問題を解決するためには、学校建設は構想段階から4~5年の期間をとることが大事です。設計者・製材所などコーディネーターの役割を果たす人が山の人々と連携を密にして基本設計・実施設計の早い時期に「どの様な木を、どのくらい」という見積りをだし、工期のプロセスと用材の準備が合うようにしておくことが必要です。そして、丸太から適切な木取りをして使用割合を高めることが費用を抑えることにつながります。もう一つは、各地が「地域材」にこだわることによって、地域を超えて「地域材」が動けない(他地域の人々につかってもらえない)ことがおきています。学校建設が一渡り終わってしまった地域は、作り上げた協力体制を生かすことができなくなっています。
    一方、都市部では近くに森がなかったり、量的に賄えなかったりするところが多くあります。そもそも「どこから木を持ってきたらいいのか」ということが見えません.国産材を「確かな品質で」「必要な量を」「必要な時に」「適正な価格で」揃えられる市場は十全に備わっていないというのが現状です。
    そこで、「山」と「まち」を直接顔の見える関係でつなぎ、地域と地域、人と人を「木」を媒介とした物語で紡ぐ全国的なネットワークをつくることができないだろうかという課題を、山とまちをつなぐ「仮想流域構想提」として提案しました。
    その前後には、中津市と能代市で、現地での木の学校づくりシンポジウムを開催し、現在、WASSのある地元埼玉県の政策研究とも連携しています。また岩手県遠野市、山形県金山町、その他と連携しながら活動を深めているところです。  
    <シンポジウムの主題>
    第4回目となる今回のシンポジウムは「木がつなぐ共生社会の創造」をテーマとしています。木の学校づくりに関わる人たちが、森林の保全、地域の活性化、技術の継承等、地域材活用の意義について共通理解を図り、行動を起こす必要があること、しかし「地域限定」としてとらえるとかえって可能性を狭めてしまうこと、そこで地域材や地域の技術を生かす意義をとらえながら、顔の見える関係づくりが重要だと考えています。
    国際的には、2011年は国連の国際森林年でした。本センターもその趣旨に賛同しながら本年の活動を広げてきた次第です。今回のシンポジウムは5年間の活動の締めくくりとなるものですが、今後の新たな形での活動の起点ともなるものと位置付けています。本日ご参加いただいた皆様には心より感謝申し上げますとともに、ご期待に応えるべく研究活動を進めていく所存ですので、一層のご支援をお願いいたします。
  • 第32回木の学校づくり研究会より「顔の見える家づくりグループの活動とその課題」講師:安藤直人氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授):
    今回は、上記のタイトルである顔の見える木材での家づくりのお話だけでなく、木を取り巻く様々な活動を評価する木づかい運動のお話、圏産材という考え方など、素材としての木をとらえる中で、様々な視点からお話ししていただきました。
    ■顔見え???
    “顔見え(顔の見える関係)”とは、使用している木材の生産地や製材所などが分かる関係を指示している。「顔の見える木材での家づくり」(冊子)では、そうした関係を大事にし、地元で地元の木を使って家を建てたいと思っている人の道しるべになればという思いで、そういった活動を実践しているグループを審査し、30選、50選、そして現在65選と少しずつ数を増やしている。そして、こういった情報をまとめることで、いずれ全国各地に広がる個々のグループの活動を、同じ業種で取り組む人たちのネットワークを構築できたらということも視野に入れている。
    ■木づかい運動
    日本の山の歴史や問題、経済の問題などに目を向けると課題は山積みである。各分野で連携しながら、より良い山のサイクルを生み出す様々なレベルでの努力が必要となる一方で、国産材を利用した製品づくりなどできることがある。木づかい運動はその取り組みを評価するものであり、現在計278件の団体・企業が登録している。
    ■圏産材
    “顔見え”という地産地消の取り組みは、木の価値を伝える手段としてもわかりやすい一方で、山のある地域などに限定されていく。より大きな視点で考えていくと、木材生産地と消費地の連携が重要となる。そのなか国産材は、それが県レベルになると県産材、さらに特定の地域レベルになると地域材といった呼ばれ方をするが、産地へのこだわりが材の価格高騰など影響を及ぼすことがある。そこで、行政単位での圏域ではなく、流通による経済圏や人々の生活圏でとらえる圏産材の考え方を指摘した。
    ■建築家による創造性をもった木への取り組み
    2010年の公共建築物木材利用促進法の制定により、より幅広く木を活用することが求められている。そのなか、ただ単純に木を使えばよいというわけではなく、建築家がアート、エンジニアリングの両視点から創造性を持って取り組むことが大事であり、そのためには関連する専門分野がチームとして取り組むことになる。日本の伝統をふまえつつも、新たな技術をどのように受け入れていくか、そしてそれに取り組むことも木造の魅力の一つであると、自身が取り組んだ事例や海外の事例を紹介しながら伝えた。

    —————
    平成20年度から始まった木の学校づくり研究会は、今回をもって最終回となりました。
    この研究会はWASS外部の方々を講師として招き、WASSで活動する研究者等がより幅広い知見を得るための勉強の場として行ってきました。全32回のべ35名の講師の方々に、毎回ご講義をしていただき、さらに研究員らとともにディスカッションを繰り返してきました。
    この研究会を継続的に実施してきた成果は、WASSの木の学校づくりの研究に活かされています。これまでご協力いただいた方々には、この場をおかりして心より感謝申し上げます。(文責:牧)


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