2号

A-WASS通信 2号(2014年6月1日)の概要

  • 第1回研修会報告:丹羽健司氏講演(講演者略歴:信州大学農学部卒業後、農水省入省、2010 年東海農政局を早期退職し、地域再生マネージャーとして「森の再生」に取り組む)
    ○日本の村と森で何が起こっているのか
    今地球上では 1 日 100 種の生物種が絶滅し、1 秒間にサッカー場 1 面の森林が砂漠化し、4 秒間に1 人が飢えが原因で死亡しています。これが地球上で起こっていることです。これから地球がどうなっていくのかということを 16 年前エクアドルで世界中の研究者たちが集まり話し合いました。欲望をコントロールできない人間には絶望しかないという結論になり、会場が暗くなりました。そこに ネイティブインディアンの末裔のピーターバーグが壇上に現れ、「日本に行きましょう」と言い始めました。「日本には鎮守の森を中心とした田で水を分け合う、お互い様という言葉があり、小さな土地で資源を分け合って生きている。そんな日本に行きましょう。そこに希望の光があります。豊田 でも大阪でも東京でもない日本の山村に行こう」ということになりました。
    ところが、そんな日本では 1 日に 100 人が自殺し、食糧自給率 41%にもかかわらず、1 年に 1 人 150kg の可食ゴミを廃棄して、埼玉県以上 39 万ヘクタールの耕作放棄地があり、木材自給率 22%、 人工林の大部分が放置林となっています。そして、何よりも 1 週間に 1 つずつ村が消え、食も人も森も村でさえも捨てられようとしています。そんな状況の中で、山村でなにができるのか森で何で きるのかを今日は話していきたいです。
    ○森を知る 森の健康診断
    私は 2000 年 9 月の東海豪雨が森に関る転機となりました。その時、テレビの生中継で小学校が流されていました。豊田市中心部を視るとスタジアムや市役所のすぐ近くまで川が氾濫していて、あ と 30 分も雨が続いていたら豊田市は壊滅していたとさえ言われています。
    この時、なぜこんなことになったのかという事を聞くと、山のじっちゃん達は山に手を入れない からだと言いました。8つのダムの最上流の矢作ダムには4万 m3 約 50 年分の流木が溜まっていました。すべてその時まで立っていた木でそれが倒され流れ込んできたのです。その傷跡をみると山 がほったらかしになっていました。森は光が差さないから草は生えず、表層土が流されているから 根がむき出しになっている状態で、いわば歯槽膿漏の山になっていて、いつ倒れてもおかしくない 状況でした。
    枝が上だけ密集しているため雨粒は上部 20~30m のところから落ちることになります。林の中だ と細かい雨粒は集められ大きくなり直径が 4~5 倍になるため地面への衝撃はその 2 乗の 16~25 倍に なります。光が入っている森だと低層木や中層木そして落ち葉などによって衝撃がやわらげられま すが、不健康な森だとそのまま水滴が強い衝撃でぶつかり土がつぶれていってしまい、表面にチルトの膜ができ表面を水が走ってしまい浸食が起きてしまうのです。
    すべての山には持ち主がいてその山主のほとんどが素人であるということが意外にも忘れられて います。今から 12 年前ですが山の境界が分かるか山主に聞いたところ、どこでも、3 割の人が自分 の山の境界が分からない状況でした。放置林はどれくらいか気になり山主へのアンケートをとると、 放置林の割合は半分くらいにしかなりませんでしたが、専門家は 9 割近くだという人までいます。 このアンケートの回収率は 78%とかなり高い数値なのに、専門家の意見とずれるのはおかしいと考えました。その結果ほとんどの山主は素人であるということに気付きました。山主は素人であるか ら山がどんな状態がいいか分からないからこういう違いが出てしまうということに気がついたので す。
    だから、こんな放置林がどれだけあるのかは自分達で調べるしかないと思いました。これは、山 主がいけないというのではなく、山が危ないということを市民の中から発信していきたくて、今、山の状態がどうでどこが一番危険でどこから手を出していかなければならないかを知るために地図をつ くりたいという気持ちで森の健康診断を始めました。
    森の健康診断の竿以外の道具は 100 円グッズで全国どこでもだれでもできるようにセットをつく りました。一チーム 6~8 人でやり、5m 四方で傾斜角、土壌の厚さ、方位、植層など、そして植生 の種類数、種類数だけなら同定を調べなくてもできます。次に混み具合調査をします。100m2 の中 に植えられた木が何本あってどれくらい生息しているか、直径、樹高なども調べ、相対幹距比や林 分形状比を計算します。分からない植物は植物鑑定団によるうんちくを楽しむことができます。そして、そのデータは毎年集め冊子にしたり、インターネット上にアップしたり、誰でも手にできる ようにしています。
    矢作川流域では、9 年間で550 地点の調査を市民 2100 人で行いました。それぞれの調査地点間隔1kmです。その結果、放置林の割合は 8~9 割程度で多くの識者が考えていたものと同じになりまし た。そんな状況を知り豊田市は森づくり委員会をつくり、一年半に 52 回も会議をやりました。
    豊田市は 20 年間で過密林を無くすことに決め、100 億円をかけることを決意しました。多くの市 民参加と科学データが揃い、多くの人があの災害を目の当たりにしたためこれが実現したと考えて います。今では、森の健康診断は全国 38 都道府県で進められています。

    ○村を知る  「山里の聞き書き」
    「村から出て行くことが良いと教えてきたが結果村に一人ぼっちになった、自分達はこの村が好き だからいいが、出て行った孫たちのことが気になる。来るたびに暗い表情がますます暗くなっていく、孫たちが生きていく都会と彼らの将来は大丈夫なのだろうか。」
    村が一週間に 1 つのペースで消え神社や祭り、文化も消えていっています。森を支えてきたのは 村で持続可能な営みは村にあります。そこで、名もなき都会の民と村の民が出会ってその文化を伝えていくのが、聞き書き塾です。聞き取りはマンツーマンで行います。各自でアポを自由に取り、 自由に聞き取ります。回数は自由でどちらにとっても楽しい時になります。
    聞き書きでは、聞き手は『相手に受け入れてもらえて良かった』『少し役に立てたかも』話し手は『自分もよくやってきた』『書いてもらってよかった』『もっと話したい』などの声が出てきました。 話の9 割は姑と嫁の愚痴だけど、残りはこの村は良いとこだよね、家族も村も幸せだったよねって いう自己肯定が進み、幸せだったということになります。そうした、持続可能な村の知恵をすくい あげていくことと木の駅プロジェクトはセットで考えています。
    ○村と森をつなぐ
    木の駅 矢作村では放置林が増加し2000年の大雨の際にも、川に木が流れ込むなど大きな被害をだしました。こうした被害を防ぐために間伐をするための動きを始めました。それが木の駅です。参加者は木の駅という広場に木を持っていきます。通常C材は 1t あたり 3000 円のところ 6000 円で買 い取ってくれる仕組みです。その差額分をNPO団体が負担することになっています。だれでもで きるからやりやすく 2 週間ほどで 40t ほど集まりました。 もう一つの狙いは地域活性化で、先ほどの支払いを地域通貨で代用し、地元の商店で使うというシ ステムになっています。それでお金が地域で回り始め地域の活性化につながっていきます。「軽トラとチェーンソーで晩酌を!」を合言葉に進めています。
    木の駅に人は常駐しなくていいシステムとなっています。地域通貨との交換は簡単で、簡単にエクセル入力したり、ノートに書き込んだりするだけでモリ券がもらえます。木の駅にマニュアルは ありますがそれはたたき台のようなもので、実行委員会で一字一句読みあわせをして、自分達で変 えていきます。このマニュアルでの肝は、「このプロジェクトは地域一人一人の名誉と信用において なりたっているものです。」というところです。だれも検品しない、信頼で成り立っているのです。 出荷はいつでもいいので自由です。他の山主の山の木を切るには承諾が必要ですが、その利益から 山主へのお礼は 10%までです。
    木の駅をやった結果、「今までごみに見えていたものが宝になった。」「一人ではきついけど仲間とやるのが楽しい。」「商品が一か月で 3 か月分売れた」、「はじめは豪快に男たちがモリ券で買ってい ったが、今は奥さんが普通に使われるようになった。」という声が上がってきています。
    木の駅はどうすれば始められるかと良く聞かれますが、「本気の山主三人とヨソモノ一人で始められる。」と答えています。このプロジェクトは固定しがちな山村の人間関係に風を通すことになります。いつも山村の集まりは暗いですが、木の駅の集まりはこれからどうしていけばいいか明るい方 向に話がいきます。山主が商店やよそ者の行く末を、商店主が山のありようを、よそ者が村の未来 を、お互いに思いやり始めます。よそ者一人がものすごく重要でいままでの固定していた議論に風 が通ります。この若者を定着させるためになんとかがんばらなきゃとかとがんばり刺激を受けます。
    曲り抜きや枝払いなど造材規格が厳しく、太くて重く、搬出する機材も無い、作業委託すると赤字が不安で、林家がA・B用材を出荷するにはハードルが高いのです。しかし、木の駅はどこの林家でも持っている軽トラとチェーンソーででき、時間も体力もC材を搬出するくらいの体力はある 上、片手間でできるから山林も時間も活用できるため、人も地域も少し元気になります。必要なことは 0.1ha の集積土場(ただし 10t トラックが横づけ可能、伝票、チョーク、メジャー、地域通貨 印刷、@3000 円×100t=30 万円、アルバイトかボランティアによる発券、換金作業、実行委員会の 準備と開催、そして気持ちです。
    全国各地に 40 個近くある木の駅のはじめの逆ザヤは寄付が大半です。逆ザヤはそこでその村の本 気がためされるもので助成金をあてにするのではただの間伐材搬出事業になってしまいます。これは自分達のことは自分達で決められるという自治のための実感づくりです。

    木の駅設営の極意は学校区を大切にすることで、範囲は小学校区がいいのですが商店が無い場合 があるので中学校区をこえない範囲にすることです。また、性善説を基本にし、多様な出番と居場 所づくりを行い、素人もよそ者も、こども、女性も多様な人が集まるものとします。既存の業者で はなくいままで山に向かわなかった人達を向かわせる。ハードルを低くしていく。主人公は住民で 行政はその一員とすること。本当に行政と住民のやる気の偏在が多く、どっちかしかやる気ないみ たいなことがほとんどです。基本的に補助金に依存しない。実行委員会で議論をつくす、フラット でオープンな参加型実行委員会の運営。
    これはまったくさっきの森の健康診断と同じで、自治的な営みがこれの基本です。木質バイオマ スエネルギーの民主化で、薪は森を、薪ストーブは個人の暮らしを、薪ボイラーは村の自治を変え ていきます。ドイツで一番幸せな村のレッテンバッハ村を見つけました。村長は若い時村を逃げ出 そうと思いましたがふみとどまり、太陽光パネルを設置したり、木質バイオマスボイラーを設置したり、地域通貨でここの商品を動かすようにしました。これはまさしく木の駅の未来だよねと話しています。
    木の駅から始まり、山菜やキノコも宝になり、僕たちはこんな宝に囲まれて暮らしているのだと 感じられるようになります。「そうじゃった、何もないと思っていた村には何でもあった、ないもの はこの手で作った、山からいただいてきたけぇ。ひとりでできんことは仲間で助け合ってきた。感謝・喜び・誇り。わしらは、山の恵みと人の絆で生きてきた。」と聞き書きの時おばあちゃんたちは話します。

    「美しい村などはじめからあったわけではない。美しく暮らそうという人がいて、美しい村になる のである。」柳田國男

    会場では多くの参加者から、共感の声や質問がでました。質問を3つ載せておきます。
    (花岡)

  • 東海地区「木と建築で創造する共生社会研究センター」(WASS東海)レポート:WASS 東海の発足は、昨 2013 年の 7 月で、ちょうど東洋大学に拠点をおいて展開された第 1 期 WASS(2007 年~2012 年 3 月)と本年 3 月に発足した木と建築で創造する共生社会実践研究会(A-WASS)の幕間の時期にあたります。
    呼びかけ人は、(株)エスウッドの角田と(株)山共の田口さんでしたが、いずれも第 1 期 WASS のメンバ ーで、実は現 A-WASS 事務局長である花岡さんからの強いお勧めをうけてのアクションでした。
    出発にあたっての共通確認は、1、「木と建築を通じて共生社会の実現を目指す最重要現場は、地域でしょう!」、2、「分野・職域を横断する諸個人の自由な交流がないと、個々の貴重な活動や経験が一つの力になっ ていかないよね。そうだ、サロンを作ろう!」、3、「具体的な活動計画なんて、はじめからはできやしないんだから、とにかくはスタートさせて、泳 ぎながら泳ぎをおぼえようぜ!」、といったところで、まあ、実にアバウトにしてシンプルなものでした。 ところが、呼びかけてみると、各分野でのトップクラスの人材が発足メンバーとして結集、工務店経営者の卵にして大学院生、一流の木造設計者にして NPO リーダー、木造設計の専門家として日々人材育 成に尽力中の教育者、行政の壁を軽々と越えて活躍する行政パーソン、建材や木製家具の分野で長く研 究を積み重ねてきた公設研究所のベテラン研究員、第 3 セクターにて中小企業の多面的支援に奮闘中の大学名誉教授、実務に精通した建築士等のスタッフを率いて急成長中の建築事務所代表、国立大学准教授にして「都市木質化プロジェクト」を行動力で推進する理系=文系女子、といった具合です。で、呼びかけ人から世話人に横滑りした私たちは、戦々恐々としながら、会の運営にあたっているわ けです。
    これまで、2 か月に 1 度のペースで勉 強会を開催してきました。その都度、会 員外の友人・知人に声をかけつつ、お互 いの関心事項を摺合せ、問題意識を共有するための中身の濃い活動を継続してい ますが、これまでに会員外の参加リスト は 25 名に及んでいます。
    さて、こうした作業の中から、より具 体的で実践的なテーマがおぼろげながら 浮かんできました。そろそろ、広く学び つつ、深く掘り下げる、次のステップに ついて検討しようと考えています。(A-WASS 運営委員    角田    惇)
  • 二国レポート:「日本の林業は”持続可能”ではない」

※パスワードは「wood」

サブコンテンツ

このページの先頭へ