7号

A-WASS通信 7号(平成27年3月4日)の概要

  • 遠野・森物語(花岡)
    柳田國男の「遠野物語」で有名な岩手県遠野市に新しい物語が生まれようとしています。遠野市は岩手県のほぼ中央に位置し、周囲を山に囲まれた遠野盆地に市街地があります。人口は3万人弱、米、野菜、ホップなどの農産物や4千頭の牛、競走馬の里など畜産が主な産業です。「遠野物語」に綴られた遠野の人々の生活は山と共にありました。山は用材、燃料、田畑の肥料の源あり、動物との交歓の場、先祖の眠る聖なる心のよりどころでした。この山々とまちのつながりを新たにつくり直そうという試みが始まったのです。A-WASS運営委員会は遠野の試みを見守り、応援することを決めました。
    遠野市は平成 26 年、将来のエネルギーを再生可能な自然エネルギーとする「新エネルギービジョン」を策定しました。その先行的事業に林野庁の「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」(3年間、総額6億円)が贈られました。「山元」の原木→チップ工場→木質バイオマスを利用した熱供給・発電施設→公共建築物等に熱・電気を供給するための技術を実証する事業です。遠野市は市長を会長に、森林組合・木工団地など市内の関連団体・企業を組織し「遠野市木質バイオマス利活用検討協議会」を立ち上げました。ここで中心的な役割を担っているのが富士通総研の梶山さんです。
    平成27年1月、A-WASS は第7回研修会に梶山さんを講師にお迎えして、「木質バイオマスのチャンスと課題」と題して講演をお願いしました。梶山さんは、バイオマス先進国ドイツから学ぶべき点として、
    1、残材利用のあり方・残材利用を可能にする技術、制度・・まずバーク(樹皮):このバークを燃焼させる技術は日本にありません。ヨーッパの大型ボイラーはできます。
    工場残材:製材工場・家具製造所などから出る木片は乾燥した高品質のチップ用材です。これらは民生用の小型ボイラーで活用すべきです。林地残材・剪定枝の活用:移動式チッパーを使えば、山で作業し、町に運べます。でも、10t トラックが通れる林業専用道と作業道を組み合わせた総合的な路網整備が必要で、山での林業施業の改善と合わせて進めます。残材の活用は、「ゴミを宝」にする技術開発からです。
    2、リスクの高いバイオマス発電・・日本のバイオマス発電の認定済み施設 59 の総出力は 106 万KW。
    FIT の 20 年間固定制の中で、燃料のチップ代金の上昇があります。しかも、発電効率は 20%程度で、バイオマスエネルギーの 8 割がムダになっています。ドイツは大型から 2000~3000KW・熱電併給に誘導する制度が導入されました。
    3、ボイラー規模と専門家の必要・・バイオマスは 24 時間連続運転が前提です。そのため、熱需要・変動を把握し熱計算に基づくボイラー規模の決定と専門家の設計が重要です。日本の失敗事例の多くはこれらの特性を無視したために起こっています。
    住民で立ち上げた8名のグループ「こもれびの森・里山支援隊」の活動が始まりました。目指すのは「生 体系の豊かな里山」です。
    指導者には「この森まで自転車で5分」という近隣に在住の森林インストラクターの仲間になっても らいました。彼は本業があるサラリーマンですが、プロ顔負けの森林の知識と施業の腕を持った WoodsMan でもあるのです。6月から始まった活動は月に一度の定例活動と不定期の施業。ほとんど素 人の組織なので、森の知識の伝授とノコギリも鎌などの道具は全て、用い方の手ほどきから始まりました。
    そもそもこの交付金は、森の所有者と地域住民が手を取り 合って、社会的財産である森の整備をして、その価値を十分 に発揮させよう、という取り組みです。よってこの活動を広 く知ってもらい地域の方々はじめ、学生や教職員など身近な 参加者を増やす事が大事なのです。
    ムカデ梯子を使っての枝打ち毎回、学内学外にアナウンスするもののなかなか参加者は 増えず、悪戦苦闘でしたがそれでもこの2月7日までの8ヶ 月間で 20 回、延べ 220 名の参加者を得て、ようやく少しず つ認知度も上がって来たようです。
    何より、森が変わって来ています。とても足を踏み入れることが出来なかった薮の下刈りが今年のメ インの作業でした。刈り払い機やチェンソーなどの動力機器を扱えるのは指導者の彼が唯一です。他の メンバーや市民参加者はノコギリと剪定鋏を使っての手作業です。手作業は効率が悪いものの、1本1 本の若木を見分け、残す樹種と刈り払う樹種を見分けることができます。方位によってまた環境によっ て植生が微妙に変わっていることもしっかり見てとれます。7月の始めには夏休みを待たずに初カブト ムシに出会いました!大寒の最中の施業では、伐倒をした枯損木の幹から越冬中のキイロスズメバチを 見つけました。ひとりではとても手がつけられなかった森を、こもれび隊の皆での活動で「これは変わ るぞ…」と確信出来る状況が見えて来たのです。
    まずは施業のために森に入れるようにしています。下刈りでだいぶ明るくもなりました。こうするこ とで地面の土に眠っているかつてこの森にあった植物の埋土種子が日の光と太陽の温度を感じるように なるのです。芽吹きのスイッチが ON となるかもしれません。森に入れるように、というのは樹冠を形 成し地面に十分な光が届かないぐらい生い茂って葉を広げている常緑樹を除伐するためです。もう少し 明るく、名の通りの程よい「こもれび」が差す森にしてゆきたい…。明るくなれば若い世代の木が育ち ます。植物数も増えます。植物が増えればそれを食べる虫も増え、虫が増えれば野鳥も増え…、美しく て気持ちの良い、そして多様な生物が生きる森となって行くはずなのです。
    建築設計が本業の私には夢があります。母校東洋大学川越キャンパスに木造の建物を創ることです。 WASS であれだけ学んだのです。ここにこそ木造建築をつくらないと!
    その建設にはキャンパスの森の樹木を使う事だって出来ます。森と木と人は程よく関わり、程よく用 い、程よく共生することが出来れば…。森と人の距離が今より少し近くなり、人は森に、森は人に分か ち合うものがあると認め合えれば…。それが出来る環境がここにはあるのです。
    どうぞこもれびの森に足を運んでみてください。そしてぜひ活動にご参加ください。一緒に森と関わ りましょう。目指す姿になるには 20 年から 30 年はかかるかもしれません。我々も世代交代をしながら、 多くの方々とともにサスティナブルな姿を目指して歩んで行きます。
  • 林野庁広報誌 RINYA 抜粋
  • 編集後記: 平成 27 年 3 月 7 日(土)東洋大学白山校舎1 号館 6 階 1601 教室において第 2 回総会と第7回研修会が開催されます。
  • 「A-WASS通信」廃刊のお知らせ:HPの立ち上げをもって、A-WASS 通信を廃刊と致します。 今後はHPを通して会の活動状況・情報を配信します。

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