A-WASSの皆様

 

明けましておめでとうございます。

 

新型コロナもなかなかおさまらず、顔を合わせて談論風発という機会が持てませんが、その間にも脱炭素への社会の動きが進む中で、木の活用にも大きな動きを感じています。

 

身近にあったことだけでも、思いつくままに列挙してみたいと思います。

 

・今泉さんが法律草案の作成に尽力された木促法は一昨年改訂され、民間建築にも幅を広げ、川上・川中・川下のそれぞれの努力義務が示されました。

木活協の林野庁の補助事業として、平成23年度から継続して取り組んでいる木造公共建築物等の整備に係る設計段階からの技術支援事業(委員長:三井所清典、私も当初から委員を務めています)は、平成30年度には地域における民間部門主導の木造公共建築物等の整備推進事業、令和4年度には地域における非住宅木造建築物整備推進事業と幅を広げてきました。当初は公共建築物を対象としていたのが民間建築にまで広がり、地域団体支援ツール、地域間連携促進ツールとつなぐことがテーマになっています。

建築物木材利用促進協定制度では、都市/山村連携型が明示され、企業も含めた2者協定、3者協定等の取組みが見られます。

振り返ると、平成19(2007)年に発足した東洋大学WASSが、多方面の専門家を招いての研究会、講演会を重ねる中で、木の建築の実現には川上・川下・川下をつなぐことの必要性を花岡先生が仮想流域構想としてまとめ、二国さんを中心にそれを実現するためには流通という概念が不可欠であることを示しました。当時はつなぐという視点は見当たりませんでした。それから15年、林野庁を中心に社会全体が動き、今では誰でも当然と思っています。それをいち早く示したことはWASS、A-WASSの活動の誇るところだと思っています。

帝国器材では、木の学校づくり、木の子を育てる。キノッコプロジェクトという冊子を発行。私もその企画編集のお手伝いをしています。1号では木の学校づくりの意義、進め方の勘所、それに長年木の家具・建具等を作ってきた企業姿勢を示しています。間もなく発刊予定の第2号では「交流都市材」という名前で、学校を建設する都心の板橋区・豊島区・足立区と、産地の日光市・能代市・鹿沼市・秩父市、等が顔の見える関係づくりが、木材活用だけでなく、木育や健康等の都市間連携にまで広がる可能性と意義を示しています。ぜひご一読を。

・先日ご紹介した小田原市での内装木質化事業は、5校の取組みを通じ、市の中で林業家、製材、伝統木工(箱根細工)、市農政課、学校、保護者の木の利用の意義・効果についての理解を広げており、新春早々来週、次の対象校について話し合うことになっています。

・小田原の隣の松田町でアドバイザー役を務めた町立松田小学校が完成しました。杉本洋文先生が関わった木造3階建校舎です。

・昨年10月7日に全木連等の主催、国交省・文科省等の後援、林野庁補助事業として、木づかいシンポジウム2022が開催されました。多くの企業が協賛し、ESG時代をビジネスチャンスとして捉える幅広い参加者による多面的な議論は、1日聞いていてまさに木造新時代を思わせました。木材活用についてこれを流行に終わられせてはならないという発言が何度も聞かれ、森林保全、脱炭素化は流行云々の課題ではないだろうと突っ込みたくなる思いがし、そういう捉え方もあるのかと、逆に新鮮でした。実は、10日ほど前に急に要請があってパネラーを務めることになったもので、収益性ということを越え、公共建築の観点から地に足の着いた取組みの重要性を伝える役割が、林野庁、文科省から期待されてのことだったようです。

・木材利用推進中央協議会による木材利用優良施設等コンクール表彰で、本年度から文部科学大臣賞が加わったこともあって審査委員を務めることになりました。力作ぞろいで上記のシンポジウムと合わせ、都心民間高層建築の可能性、収益計算が合えば、建設単価も問わないで実現できることは、補助金や行財政が前提となる公共建築とは違う可能性を持つとことを感じました。CLT、縦ログその他マッシブに木を使う工夫も様々見られ興味深く思いました。最高賞と言える内閣総理大臣賞に小泉さん(日本設計)の流山市立おおぐろの森中学校が選ばれました。作品としての建築だけでなく、実現に向けた多くの課題に対し、設計者としての総合的な努力が高く評価されてのことと思います。

・この表彰で優秀賞を得た吉野町立さくら学園小学校、常陸太田市立水府学園小・中学校を視察。木の学校に対する学校、関係者の喜びが伝わってきました。

・同じく文部科学大臣賞を受賞した高知県大豊町立大豊学園中学校で、文科省の木の学校づくり講習会が行われ、講師として行きました。CLTを貫構造も生かした多様な学校で、CLT活用の正解とは言えないでしょうが、木の厚みのよさを感じるユニークで豊かな空間をもつ学校建築でした。そして翌日が、賀状でも書いた梼原行です。

・最後になりましたが、網野先生が2022年度グッドデザイン賞(金賞)の受賞、小泉さんが上記の通り木材利用優良施設等コンクール内閣総理大臣賞受賞され、まことにおめでとうございました。(ついでに言えば、私は陸前高田市立気仙小学校で、木の建築フォーラムの木の建築賞を頂きました。)

すでにご案内の通り、2月4日午後に上記2つの栄えある賞の受賞者による豪華講演会がございます。奮ってご参加あるいはご視聴ください。それぞれが、今年の一言を述べ合う機会にもできればと思っております。

簡単に書くつもりが長くなってしまいました。

今年1年それぞれにとって豊かな年となりますように。

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長澤 悟  Satoru Nagasawa

東洋大学名誉教授,工学博士

教育環境研究所所長

木と建築で創造する共生社会実践研究会(A-WASS)会長