vol.24

木の学校づくりネットワーク 第24号(平成22年11月13日)の概要

  • 木の学校づくりシンポジウム開催のお知らせ
  • 木材会館見学会:
    10月23日、WASS関係者が東京都新木場にある木材会館を訪ね、東京木材問屋共同組合の吉条理事長の案内で2009年に竣工した建物を見学した。木材会館はJR新木場駅に隣接する約500坪の敷地に建設された地上7階、地下1階の建物で、主要な構造はRC造であるが2次構造材、内装材として約1000㎥の木材が使用され、都市の建物に木材を使う上での斬新な工夫が随所にみられた。中でも最も挑戦的な木材の使い方がみられる最上階7階のホールにて吉条理事長にお話をしていただいた。岐阜県の木工業者が製作し、3分割して現場に運ばれ組立てられた木造梁には、接着剤が一切使われていない。鋼材のように加工時の熱伝導がないため、3寸5分の芯持ちのヒノキ角材10数段を無数の白樫の木栓によって連結した梁は、驚く程精度が高い。吉条理事長が「追っかけ大栓もどき」と説明されたこの構法は、伝統構法に求められる技術力に、コンピュータ制御による高精度の木材加工技術が合致したものである。吉条理事長は、その背景として芯持ちの角材であっても背割れを必要としない乾燥技術の高精度化の影響も指摘した。公開空地に面した西側側面ではベランダの欄干や下からの見上げを意識した天井、他にもエントランスホールのベンチ、間仕切り壁、階段など、各所に一般的な住宅用材として使われている3寸5分角の無垢材が用いられ、規格材の多様な活用方法が強調されていた。
    また耐火性の確保にも木材会館独自の試みがみられ、7階のホールは5.7mの天井高により床で生じる火災に対する耐火性能を確保しているため、不燃処理することなく用いることができた。一方で木材会館のテナント階では、一般的な天上高の鉄骨のスラブを天井裏に隠さず、ロックウールで密閉するように巻き、その外側を木材で囲んで空間を設け、梁を空調用のダクトスペースに内包することで、天井高を利用した煙だまりをつくり、木を上手に使って避難時間を確保できるように計画されていた。
    木材会館の通路には厚さ18mmスギの型枠材が打ち放たれた壁面と呼応するように積みおかれ、林業の復興を願いながら、木場が木材市場として活況を呈した頃に上野の西洋美術館の型枠材を供給した吉条理事長の話が印象に残った。(樋口)
  • データベース・グループからの研究報告:
    WASSのデータベース・グループは全国の木の学校についての情報を集め、まとめようとしています。木造の学校や構造は鉄筋コンクリート造や鉄骨造だが内装を木質化した学校について、誰もが利用できるデータベースを構築しているところです。
    私たちは優れた木の学校建築をえた学校からの「木材を活用した理由」についての記述を目にし、分析を試みました。
    1研究の背景と目的
    日本では、現在、ほとんどの学校建築が鉄筋コンクリートや鉄骨造で建てられ、木造は学校の全床面積の2% 程度[1]であす。学校木質化は昭和60年(1980)、平成8年、平成10 年、平成16 年、平成19 年に文部科学省から「学校施設における木材使用の推進について」[2] が各都道府県に通知され、徐々に建てられています。私たちは木の学校建築を学校関係者はなぜ計画したか、学校関係者は木の学校建築の何を魅力ととらえているか、問題点はどのようなことかを知り、これからの木の学校計画のてがかりや方向性を明らかにしようとしました。
    2方 法
    文教施設協会は1997年に日本各地の優れた木造学校建築について調査を行いました。その学校建築は日本全国の21幼稚園、88小学校、30中学校、8高校、3特別支援学校を含んでいます。この調査内容としては、生徒の人数、教室数、部位による使用樹種などです。さらに、学校関係者に対して「木材を活用した理由」、「学校施設の今日的課題への対応」、「地域特性を生かした創意工夫の内容」、「児童生徒、教職員等の当該建物に対する評価」、「その他の特記事項」の質問し、回答をえています。
    ここでは「木材を活用した理由」での記述について分析しました。それぞれは4,5行記述されていることが多かったです。
    対象の学校建築は次のとおり。
    1構造が木造の学校建築
    2構造は木造以外の鉄筋コンクリートや鉄骨造で内装や外装に木を使った整備がされた学校建築。
    これらは校舎、屋内運動場などで、外部の木造施設整備も含んでいます。
    3結 果
    調査対象の学校の児童生徒数平均は幼稚園60.6名、小学校147.8名、中学校279.3、高等学校715.9名、特別支援学校46名です。1997年度の生徒児童数の全国平均[1]は幼稚園121.6名、小学校331.1名、中学校401.8名、高等学校827.4名、特別支援学校88.5名なので、幼稚園、小学校、特別支援学校では、分析対象学校の平均児童数は全国平均の半分ほどです。中学校、高等学校では、分析対象学校の平均児童数は全国平均よりやや少なくなっています。
    また、分析した幼稚園から高校までの147校のうち、過疎地域にある学校は36.1%、山村地域にある学校は38.8%。特別豪雪地帯は5.4%、豪雪地帯は22.4%でした。都会の学校は少ないです。
    記述を記述内容により、分類して分析しました。たとえば、ある幼稚園の「木材を使用した理由」では、次のような記述がある。「H村は県内でも有数の木材産地であることと、幼稚園は幼児の生活の場であることから、家庭の延長と考え木造建築とした。木は、柔らかさ、優しさを醸し出すため、外壁には耐候性が期待でき木造を意識できる材料を使用している。」
    これを分析すると、「木の長所ゆえに使用した」という記述2つ、「木材産地だから、木材産地が近いから」という記述1つ、「デザイン・建築管理要因」についての記述1つが含まれるということが分析できます。他の例もこのように記述内容を分析してまとめました。
    たとえば、「木材を活用した理由」についての記述は次のようにまとめた。
    1.木の長所ゆえに活用した、2. 地域との関係、3. 生徒・園児へのはたらきかけ・教育、4.木材産地、5. 建築管理的要因・デザイン、6. 環境教育、7. 身近な建物との関係、 8. 国・都道府県・市町村との関係、9. 生徒・園児の精神安定、10.木の再認識。学校種別のまとめを[図1]に示します。
    「木材を活用した理由」の中で、「木の長所ゆえに活用した」とまとめられる記述は多く、複数の長所を挙げているのをカウントすると100%を超え、平均すると179.3%でした。特に「暖かさ」についての記述が頻繁にあらわれ、「やわらかい」の指摘も多く、「やわらかいので園児がぶつかっても安全」という幼稚園での記述もありました。次に「潤いのある」、「やさしい」、「香り」、「安全」などが記述されていました。[図2]を参照してください。
    次に「地域との関係」では「周囲の自然の多い景観にあう」、「周囲環境との調和を図るため」、「地元の要望があったから」、「小規模校であるから木造が可能」という記述にまとめられます。
    54.7%が「生徒・園児へのはたらきかけ・教育」について指摘しています。小学校では、「木が子どもの情操を豊かにいてくれる」という内容の記述が繰り返し見られました。
    「木材を活用した理由」としては、「自然の多い地域の景観とあうので木材を活用した」などの「地域との関係」についてのべている回答と「木材産地だから・木材産地が近いから」という地場産業の育成という意味も含む回答が含まれていました。木材産出地域の幼稚園では「地域住民に木の良さを再認識させるため」という記述もありました。
    「デザイン・建築管理的要因」についての回答は32.0%、デザインの工夫、大断面集成材、塩害対策としての木造選択など多様な記述が見られました。
    小学校の記述では「コンクリート系の既存校舎に不満な点があったから」という記述があった一方、「鉄筋コンクリート造、外壁、内装ともに木材を使用し、木造風で温かみのある木のぬくもりの感じられる校舎づくりとした」という木質化についての記述もありました。
    「自重が小さく基礎工事費が少なくおさえられる」「解体費が少なくおさえられる」「維持管理が容易」「冬季や雨期の結露を防ぐため」という記述も見られました。
    「環境教育」の側面の記述は幼稚園で多く、「環境に優しいので木材を活用した」「自然への関心を高める」などの記述がありました。
    「身近な建物との関係」についての記述は14.0%ある。小学校では「既存の園舎・校舎者が木造だっ合が多い住宅との関係ものべられていました。
    「国・都道府県・市町村との関係」について、児童生徒の落ち着きなどの「精神安定」について、「木の再認識」についての記述も見られました。
    4まとめ
    学校建築に「木を活用した理由」の記述は次のようにまとめられます。
    ・「木の長所ゆえに活用した」はどの種類の学校でも指摘が多いです。幼稚園でもっとも多く、高校では木そのものの長所に注目するというより、木を使った空間の魅力について注目している回答が多かったです。
    ・2番目に多い記述は、全体では「地域との関係」、幼稚園では「環境教育」でした。小・中学校は地域とのつながりが強く建設主体は町や村です。木の活用の理由として地域の景観や自然との合致、地域の人々の要望がのべられていました。
    ・3番目に多い記述は「児童生徒への働きかけ・教育」で、木を使った学校建築の教育効果が期待されていました。
    ・4番目に「木材産地」、次に「デザイン・建築管理的要因」があげられていました。
    これらの、学校に木を使うことの良さ、つまり「木の良さ」、「木を使った空間の児童・教職員への良さ」、「環境教育のはたらき」、をより多くのひとびとが認識することにより、学校の木質化は加速するのではないでしょうか。
    同時に、木材が使われることにより森林の循環が促進し、二酸化炭素吸収効果が保持され地球環境改善につながるということの多くのひとびとへの周知も、なお、必要と思われました。■参 考
    [1] 学校の統計は文部科学省のインターネットサイトを参照した。
    [2] 木材利用推進の取り組みについて、平成16年2月5日 副大臣


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