木の学校づくりネットワーク 3号(平成20年10月1日)の概要

  • 巻頭コラム:「日本人の木造建築に対する愛着と憧れ」藤井 弘義(東洋大学理工学部建築学科講師)
    木から作られる物には、建物・家具・寄木細工・ワイン・ウィスキーの樽など広く様々に使われており、生活に密着している酒・味噌・醤油も杉板張りのような麹室で良い商品が出来上がっていくのである。その代表的な木造建物でよく表現される言葉の中に、木の香・木目・木振り・木の温もりなどがある。この表現言葉で質の良い木に囲まれていた古代の日本人が木材に対する愛着と憧れをもっているのも少しも不思議ではない。
    今日でも多くの日本人に、この木の家屋に対する愛着と憧れが継承されてきたことを反映している。
    日本従来の木造建築の屋内には木が多量に用いられ,ペンキで塗られることは無かったし、柱や扉,家具などには,天然の木目と色を鑑賞できるような仕上げが施され,縁側の板には何の仕上げも施されていなかった。仕上げの施されていない木を使うことにより,庭の樹木との自然な結びつきと「わびさび」に結び付かせることもでき結果として生じるのは,刺激よりも調和と静寂といった効果である。多くの日本人は,いつの日かそんな家を持つのが「夢だ」と思っている。
    しかし,そのような家屋を建てるための良質の材木は,今ではとても高すぎて手が出ない場合が多くなったが、それでも日本人はできだけ木を使うことにこだわる。木は見映えがするだけでなく,自然の力がありしばしば襲う地震や台風,蒸し暑い夏や寒い冬など,日本を取り巻く環境に合っていることを知っているからである。今は、化学的な製品による多くの恩恵を受けているが石などの材質だと割れてしまう場合でも,木材だと,力が掛かっても,しなやかに曲がったりねじれたりするので,木材は地震国には大変な恩恵をもたらしてきたのである。木にはまた,手入れにより保湿と断熱というすばらしい特性もあり6月から8月にかけての日本の雨や湿気にもかかわらず,家屋が朽ちてしまうことはない。この時期に,木は状況に応じて変化し,ある程度の快適な暮らしをさせてくれる。木には空気中から湿気を吸収し,後から湿気を放出する能力があるからである。とはいえ,普通の人にとって,木の魅力は全く別のところにあるようだ。
    人々が木を選ぶ理由は,ほとんどの場合その外見で木の美しさにある。「木は自然の産物なので一片一片他とは異なっている。一本の木から採られた木材の各部分,あるいは同じ木の板の各部分でさえも他とは異なる。強度や色は同じかもしれないが,木目は同じではない。木を大変魅力的にしているのは,特徴,強度,色合い,扱いやすさ,さらには香りにまで見られるこの多様性なのである。*1
    木は,安物の,質の悪い建材などではない。それどころか木材を正しく選び,正しく扱えば,幾百年もの使用に耐える断熱効果の高い建物を造ることができる。ある権威者の主張するところによると,きちんと手入れさえすれば,木は決して朽ちることがありませんと述べている。その真偽はともかくとしても,木は創造者がわたしたちに与えてくれた最良の建材の一つであることに間違いないのである。このように木は、自然の産物なので手入れや扱い方により、木の美しさ・木の温もり・保温や断熱など木の魅力を存分に味わうことが出来るのである。
    そのような木造建築に対して、日本人は愛着と憧れをもっているのである。*1:アルバート・ジャクソンとデービッド・デイは,共著の「コリンズ 良い木のハンドブック」
  • ・他

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